フォルクスワーゲン・パサートRライン2.0TSIの走り・試乗レビュー・口コミ
15 12月, 2016
フォルクスワーゲンの車は導入編のラグジュアリーカーとしても、ちょっと贅沢なファミリーカーとしても受け入れやすいことから日本でも比較的求める人が多い。今回はその中でも力強いコンパクトSUV、ティグアンを紹介しよう。
比較的低価格でラグジュアリーカーを手に入れたい人、素早く、そして快適な走りをしてくれる車を手に入れたい人にとって、ティグアンはぴったりな車といえる。ティグアンは程よいスポーティな走りがあり、キャビンの品質も比較的高い車だ。しかし、燃費があまり良くない点やリアシート、カーゴスペースが広くないといった点から、実用性の分野においてティグアンは弱い。そういった意味では、実はファミリー向けでなく、フォルクスワーゲンの中では比較的贅沢感を求める車といえるだろう。
キャビンを見ると、シンプルでクールな印象のあるデザインが好ましいと感じられる。合成皮革のような触り心地の良いシート、フロントシートについてはヒートシーターがついており、多くのラグジュアリーカーと同様に、ティグアンのキャビンは風や路面からの騒音を防いでくれている。その上質さは十分だ。
ただし、そのキャビンに先進性があるかと問われれば、そうでもない。ライバルと比べれば、やや時代遅れな装備があることも確かだ。何せ、ティグアンそのものは2009年以来大きなモデルチェンジもされていないのだ。近年はSUV人気でティグアンの売れ行きも決して悪くないが、近代的で洗練されたインテリアを求めるのであれば、他のSUVをチェックした方が良いだろう。
フロントシートについては快適で居心地の良いティグアン。座席の調節もしやすく、道や交通標識なども非常に見やすい。フロントシートもリアシートも、頭上は背の高い人でも十分対応できるだけの高さがある。また、リアシートもスライド・リクライニングが可能となっており、足元やカーゴスペースに向けても調整ができる。これはリアシートにおいても快適に過ごす手助けになる訳だが、それでも足元はやはり狭い。乗員全体に十分なスペースを与えようと思うならば、他の車を探した方が良いかもしれない。
カーゴスペースも広くない。リアシートを折りたためば、もちろん通常の倍以上の容量を積むことができるようになるが、このセグメントにおいては基本的積載量が最も小さい部類に入ってしまう。スバルのフォレスター、ホンダのCR-V、トヨタのRAV4など、国産車でももっと積載量の大きい車がある。
キャビンについては改善された点もある。例えば、かつてのティグアンは5インチのタッチスクリーンを搭載しており、あまりに小さいと非難されていた。また、このスクリーングラフィクスは時代遅れなものが使われており、インフォテイメントシステムも安っぽく、反応が鈍いとまで言われていた。2017年モデルではこのタッチスクリーンが6.3インチと大きさを拡大し、デザインも改め、そして反応も早くなっている。また、インンフォテイメントシステムには多くのスマートフォン連携機能がついており、Apple CarPlayやAndroid Autoといったものがついている。
しかし、スマートフォン連携機能が充実した一方で、安全性に対する装備がライバルに比べて少ない。リアビューカメラなどはついているものの、多くのライバルはブラインドスポットモニタリングや車線逸脱防止機能などもついているのだ。ファミリー層向けの車としては、安全性は絶対的に求められるので、この点においてティグアンはあまりファミリー向けと言えない。
走らせてみると、パフォーマンスは十分だ。このセグメントにおいては最も力強いエンジンを持っている車の一つといえるだろう。2.0リッターターボチャージャー付き4気筒エンジンを搭載しているが、パワーは200馬力を誇り、滑らかな加速を見せてくれる。ライバルの中にはよりエンジンを大型にしているものもあるが、パワー効率でいけばティグアンが勝る。また、販売価格などを考慮すれば、ティグアンはかなりお得な分類に入るはずだ。
一方で、維持費にお金がかかるのも事実だ。ティグアンのパワーを求めるならば、その場合はいまいちな燃費を受け入れなければいけない。燃費はベースモデルで14.6km/Lであり、上級トリムグレードになれば11.5km/Lと、まるで大型SUVのような燃費になってしまう。
維持費はかかるが、落ち着きのあるハンドリングとコーナーにおけるバランスの良さなど、ティグアンの走りは快適で、かつ力強さがある。四輪駆動方式を導入すれば、不安定な天気でもばっちり対応できる。
価格は342万円からであり、ベンツのGLAなどとも競合する。力強い走りと程よい快適な乗り心地を求めるならティグアン、広さや燃費を考えるなら他の車、あなたはどちらを求めるだろうか。